古倉宗治の研究業績2
2.審査付学術論文
論文名 |
著者 |
公刊 |
掲載誌 |
概要 |
1.交通手段としての自転車の利用促進策について米国自転車政策からの教訓 |
単 |
平成14年12月 |
「地域学研究」 第32巻第3号 329~343頁15ページ |
米国は世界的にも強力な自転施策を展開しており、これに学ぶべきものは多い。すなわち、①米国では自転車が交通手段であることが法律上明示され、また、自転車利用の目標値が設定されており、これにより各種の施策を展開しているが、日本では位置付けが明示されず、また、利用の目標値が設定されていない。②米国では交通上自転車を自動車と対等に置き、同等の権利義務を自転車に適用する等ソフト面での環境整備も図るようにしているが、日本は交通弱者として歩行者と同列の扱いである。③米国の自転車政策は、極めて強力かつ規模が大きく、多様である。州の交通計画、組織(自転車総括官)、財政(補助金)等の内政にまで介入してこれを推進しようとしている。日本にはこのような施策はない。④米国では財政面、組織面、計画面できめ細かな自転車政策を展開し、また、これが既に10年以上の実績を得ている。 |
2.自転車通勤等の推進による自転車利用促進策に関する一考察 |
単 |
平成15年9月 |
「計画行政」 第26巻第3号(通巻76号) 37~45頁9ページ |
放置問題と自転車利用促進策が矛盾しないような、すなわち放置を軽減するような自転車利用の促進施策が必要とされる。そこで、これを解決する方策として、欧米で自転車施策の柱にもなっている自転車通勤及び自転車通学(いずれも自宅から直接職場・学校まで)を重点的に推進すること、このための具体の効果があり、かつ実効性のある施策を展開することが必要である。本件研究は、この方策について一つの方向性を考察するものである。まず、一般的に多くの人が自転車で到達可能な距離であるとするところを各種アンケート調査の結果から考え、現実にこれに該当することとなる人が多く存在することを検討し、これらの人々を対象にして直接職場や学校に行くための自転車通勤・通学が現実性を帯びる施策であることを考察するとともに、これを促進するための可能な環境整備や条件(インセンティブ)を分析し、一般的な自転車通勤等の可能性とそのための重点的かつ効果的な施策を研究し、提案したものである。 |
3.米国における自転車の政策的位置付けから学ぶ日本の自転車政策の方向性に関する一考察 |
単 |
平成15年10月 |
「環境共生」 第8巻 41~51頁11ページ |
米国は、交通手段として法律上、計画上、道路交通上等の位置付けを明確にし、①州等に対する総合交通計画策定や担当官の設置の義務付け、高率の補助制度等の財政措置、②自動車と同等の権利・義務の設定(車道通行等)等により自転車利用の促進と安全性の向上等の成果をあげている。これに対して日本は、交通手段としての具体の施策はこれからである。また、米国は健康・金銭等の実際上のメリットにより自転車利用を呼び掛けており、地球環境よりも、両国民の意識にも沿っている。これらのことから、①交通手段として位置付け、道路交通上自動車と対等の取扱いをすること、②国民の利用実態及び意識をベースに重点的な自転車施策を展開すること、③権利義務の設定などソフト面での施策を展開すること等が必要であることを結論付けている。 |
4.自転車の車道通行の安全性に関する一考察 |
共 ○古倉、田中 |
平成15年10月 |
「環境共生」 第8巻 78~89頁12ページ |
自転車の歩道通行では、快適性・安全性・迅速性がなく、自転車を交通手段として活用するには、欧米の先進国のすべてで採用している車道通行を原則とすることが必要である。しかし、特に安全性については、不安を抱く人も多いが、現実には歩道通行を主体としたわが国の自転車事故数は増加一途をたどり、これに対して欧米諸国では自転車事故死者数が軒並み大幅な減少をしている。また、危険な箇所は車道ではなく交差点又はこれに類似する箇所(自転車事故数の8割)であり、この理由は歩道から交差点に飛び出す自転車が自動車の認識のないままに接触するためである。また、統計的にも車道通行は事故の増加を招かない。以上のことを各種統計や分析により立証した。 |
5. わが国の都市自治体の総合計画書の特徴に関する要因構造の分析 |
共 ○兼田・古倉 |
平成5年9月 |
「計画行政」 第16巻第3号 68~75頁8ページ |
本研究は、都市自治体の総合計画書に顕れる特徴を規定する要因構造をモデルとして構築することを目的として、実態調査で得たデータの分析を行ったものである。第一に、計画書の形式、策定手続、実効性担保策などの計画書上の特徴、行政規模、政治・財政状況、組織構造といった策定環境上の特徴とで、関連分析の実施、第二に、計画書と策定環境の両者の関係の分析、第三に両分析で得た知見の突き合わせを行った。結果として、このモデルはひとつの有力なものとなりうることを確認した。 |
6.総合的な都市環境政策検討のための評価指標に関する研究 |
共 ○高木健(執筆)・吉田直樹・古倉宗治(企画まとめ担当) |
平成16年7月 |
「環境共生」 第9巻 70~79 |
都市環境を評価する指標は、さまざまに研究されているが、データの不足や分析方法の複雑さなどで実用的なものが少ない。このため、既存のデータを活用し、かつ、簡易で分かりやすい指標の開発を試みたものである。その方法は、都市環境に係る分野を人間系と自然系という対立する概念で分類し、それぞれに変化させうる動因指標と現状の状態指標により分類した。これらについて、既存のデータを収集し、適当な指標を採用し、各都市の標準偏差を用いて、その都市がどの位置にあるかを明確にし、相対的な環境の状態を評価し、把握する方法を開発したものである。 |
3.研究書単著
「自転車利用促進のためのソフト施策」ぎょうせい2006.12刊
自治体の最も頭の痛い問題である自転車政策について、自転車の環境と健康の側面からの自転車利用の有効性、自転車活用のまちづくりの必要性を明確にし、そのための方策として、従来ハードの走行環境の整備が中心であった自転車政策を、ソフト面の施策を中心に施策展開のあり方を提案したものである。著者の学位論文の内容を一般向けに分かりやすくしたものである。第一に、自転車のメリットを明確にすること、第二に、先進国の自転車政策と我が国での可能性について考察すること、第三に、自転車走行空間として車道を中心とした安全快適な自転車空間のあり方を立証し、第四に、通勤と通学の自転車利用のためのソフト的な施策のあり方、第五に自転車の走行環境等の情報提供のあり方、第六に、自転車の問題点とされる放置、安全、天候、ルール無視等に対するソフト面からの自転車利用促進策の有効性を論証したものである。